2017年3月29日水曜日

【書評】落合陽一『超AI時代の生存戦略』:デジタルネイティヴ最先端の思考を体感しよう!(動画追加・追記あり)



落合陽一という人を知ったのは去年の年末くらい。

成毛さんの本(下のリンクの本)の推薦書に『魔法の世紀』が載っていて、紹介文に
1987年生まれの著者は 、筑波大学情報学群情報メディア創成学類卒 、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了で 「現代の魔法使い 」と呼ばれている研究者だ。
と書かれていた。

     

で、

若いし、"メディア創成学類"って謎だし、「現代の魔法使い」だし。
とにかくわけわかんなくて、物凄く興味を惹かれて、注目するようになった。

それからは、NewsPicksとかを中心にインタビューとか色々読んでいるけど、これまた正直わっからん。
一般的なテーマに沿ったインタビュー(例えば就活とか)だとまだ分かるんだけど、
著者自身の研究の話とかになると結構マジで分からん。

当然、凄いのは分かるんだけどね、仕組みが分からなすぎてマジックなんだよね。まさに魔術師。

これとか。二次元のディスプレイなんだけど触ると心臓みたいにどくどくする、みたいのとか。

落合陽一はいかにして、「魔法使い」になったのか(cakes: 「21世紀の変人たち」とする、「真面目」な話)

あと、これ人柄を表してるインタビューでいいなと思ったやつ。
物質嫁の良さを『解像度が高いし、性能が高い』みたいな事言ってるのとかね、実質嫁と比較したりして。

でも「いい奴なんですよね、嫁」みたいな、エモい事言ったりする。


なんか若いしぶっ飛んでるし『うっわ!遂にこういう人出て来たんだ』っていうので、見つけて嬉しかったのが、落合さんです。

同世代で現在形、かつ、出た本全部読みたいって思う、数少ない人です。
(あとは詩人の最果タヒちゃん)


いや、しかし、題名からして凄いよね、この本。
何って、『超』AI時代の生存戦略だからね、AI時代超えちゃってるからね、この本。

まぁ、2045年に迎えると言われているシンギュラリティを念頭に置いた時間感覚から来た題名だと思うので、その時点を考えるともう"超"AI時代だと思うんだけど、
3ヶ月前に『AI時代の人生戦略』って成毛さんの本が出たばっかだし!大概みんな、AI時代の人生戦略にも追いついてないし!笑

と、今までの話からお察しのとおり、とにかく落合陽一の思考は僕らの理解の遥か先を行っている。
それを念頭に読まないと、いかにもビジネス書もしくは自己啓発本らしい題名と体裁の本だけれども正直置いてけぼりくらうのだ。

内容は、落合さんが「本書を読む前に」という冒頭のまえがきで説明してくれていて、

「プロローグ」今後数年に渡るパラダイムの大枠

「第1章」ワークライフバランスからワークアズライフへの転換と、それに関わるマインドセットの転換点

「第2章」「第3章」個別トピック。前半の2パートを読み解く具体例

「エピローグ」これからの社会の展望と人間性の更新、現在の技術革新を俯瞰

となっていて、基本的にその通り。興味を惹いたら読んでほしいし、無理強いするにはちと内容がキツいかも。

ただ、ビギナーというか前提知識少なめでも読み易い読み方はあるかなと思っていて、個人的なおすすめの読み方としては、
エピローグ→プロローグ→1章→2章→3章
の順がいいんじゃないかと思う。

プロローグはこれまでの技術革新の前提無しに始まるので、それに付いていけるバックボーンという名の足腰が必要。

僕はとりあえず頭から読み始めてプロローグで少し足を取られたけど、勢いでそのまま後続の章に進んでいった。
だけど、エピローグ読んだ後に読み返したら頭への入り方が全然違ったので、"最初にエピローグから読めば良かったな"と思った。

具体的に言うと、楽観的シンギュラリティとテクノフォビアについて書かれている辺り。

エピローグに書かれているテクノフォビアに対する懸念など、著者のスタンス・背景を踏まえてないとどう受け取っていいか戸惑うし、
その後に続く「クリエイティブなことしろ説法」に対する著者の苛立ちをきちんと汲むのがちょっと大変。
その後の論旨にモロに繋がるとこだから、きちんと理解したい箇所だ。

ま、でもここをガチッと掴めればあとは流れに乗れる。知らない言葉や概念は調べたり、なんなら多少は読み飛ばしながら読めばいいと思う。
(読み飛ばしはダメかしら?)

恐らく細々した単語より、彼の思考の前提・立脚点があまりにも自分たちと異なっていて、普通のビジネス書・自己啓発本を読むつもりでいると面食らう、みたいな方が多いかもしれない。

いや、でもそこが彼の新しさであり、凄さ。
その立脚点を探って、思考をモノに出来るようにする事が一番のこの本の効用になる筈。

そう考えると専門的になり過ぎず、かと言ってイージーにもならず(前書きで「読みやすく書いた」とは書いているものの、やはりある程度のレベルは求められる)本当にちょうどいいテキスト。

デジタルネイティヴの一番の尖りに触れるには最適だと思う。何度か返す返す読んでモノにしたい。

まずはcakesの記事からでもいいと思うから、是非この落合陽一の思考に触れてほしいと思う。おしまい。

(2017.03.30 追記)
落合さん本人の動画による本書の解説があるらしいので、以下に貼り付け!



いやあ、なんというか本書の解説っつうか大分別の話してます!笑
ただ、AIによる労働の代替が進んだ結果として江戸時代の話が職業の細分化の観点で例に出ていたんだけど、この辺りについて、少し違う観点で思ってる事をつらつら書く。

AIによる労働の代替が進んだ結果として、恐らくみんな暇になるから、
今後はエンターテイメントが伸びていくだろうし、個人個人も遊び方を覚えないというような話をホリエモンとかが言っていて、この観点もすごく江戸時代的だなと思っている。

どういう事かというと、江戸を専門にする時代考証家の杉浦日向子が、確かなんかのエッセイで
「江戸時代の人たちは働く時間がものすごく短くて、気の向いたとき一日4時間とかしか働かず、あとはのんびり遊んでた」って書いてて。まあその結果、生産性は江戸時代を通して変わらなかったんだけどね、そういう価値観だった。

で、その価値観の産物として、旦那芸という言葉に代表されるような伝統芸能の素人遊びも多く行われて、エンターテイメントも裾野が広かったし、お金持っている人が芸人(現在の言葉だとエンタメ業界)にきちんとお金を落としてくれる時代だった。

(よく落語とかでも旦那様が謡だの茶道だの色々習い事する話があるじゃない。番頭や小僧もそれに倣ってやり始めたり。ああいう裾野の広さ)

僕はこういう雰囲気の江戸時代に対する憧れがかなりあって、
AIや今後の技術発展によって、職業の細分化(動画で出ていたのはそういう論点)だけでなく、遊び方も江戸時代的になればいいなぁというのが、
個人的な今後の社会に対する希望的楽観的な見通し and 願い。

…なんの話か分からなくなってきたけど、この動画は本書の直接解説というよりは、
いま僕がつらつら書いたような思考を思いめぐらせたりする補助線としておすすめ。

何やら6月あたりに別の新刊が出るようで、それに対する導入になっているという
話も動画には出ておりましたので、気になる方はその辺りも含めて聞いてみて下さい。

ほんとにおしまい。

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