2017年3月21日火曜日

【書評】『ブロックチェーン・レボリューション』:ブロックチェーンの概念と世界的動向を掴む最良の入門書



昨今流行りのブロックチェーン。
今や関連書が書店に並び、WEB、雑誌、テレビでもブロックチェーンという字面が踊っている。

「インターネットに比肩する技術」とまで言われるブロックチェーンについて、僕が初めて知識を得たのは、Wiredの特集だった。

「サトシ・ナカモトという正体不明の天才が公開した論文で、ブロックチェーンという分散型台帳の仕組みが提唱されていて、こいつが世界を変革するほどのすんごい可能性を秘めた技術」だという事をその時知った。

可能性の広がりに満ちた特集で、SFみたいな世界になってくっていう印象で、すんげぇなぁと思い、そこから興味を持った。

ただ、FinTechの流れでビットコインが取り沙汰されたからなのか、WEBや雑誌の特集で組まれるブロックチェーンの内容は、あくまで優れた新規技術の一つの様という切り取り方が強い印象だ。

ブロックチェーンが持つ潜在的な可能性の大きさや、それが持つ思想的な意味合い、そこから始まりつつあるムーブメントの話はあまり語られていなかったように感じた。

Wiredで垣間見て心に刺さったのは、まさにそういう部分だし、ブロックチェーンの可能性の大きさを考えると、ただの技術としてではなく、そういう背景も含めて理解しておく必要があると思った。

そういう本を探していく中で一番いいなと思ったのが、本書『ブロックチェーン・レボリューション』だ。


伊藤穰一だとか、スティーブ・ウォズニアックだとか、超有名人たちの折り紙付きで2016年に刊行された、正にブロックチェーンの可能性やムーブメントについて、未来への希望を込めた内容でまとめた決定版だ。

この本の素晴らしい所は、まさにブロックチェーンが持つ思想的なもの、可能性の大きさを、沢山のスタートアップ企業経験者や関係者のインタビューから浮かび上がらせている事だ。

この本を読んで、「こんなに沢山の人々が、こわなに多様な形で、ブロックチェーンを通した未来を描き、事業をやっているのか!」と驚いた。

FinTechに沸いている金融業界は勿論のこと、
IoTとの関連の話から交通、エネルギー、農業、医療・ヘルスケアなど多岐の業界が話題に上り、
スマートコントラクトや自立分散企業といった概念による企業・ビジネスの在り方の変革、
音楽やアートの世界の変革、果てはブロックチェーン民主主義まで言及されている。

その裾野の広さ自体も凄いが、各分野で実際に取り組んでいる人たちへのインタビューを通して、ブロックチェーンによるイノベーションを起こそうと日夜目論んでいるというのがありありと分かり、

「うわー、知らない所で世界はこんなに動いているのか!!」という目の覚めるような驚きがあるのが、この本の一番意義深い所だろう。

インタビュー・出展の脚注が20ページ超に渡る事からも、その取材量が目に見えるだろう。

という事で、まず読むなら絶対にこの一冊をお勧めしたい!!
正直、その大まかな概念は今やネットを見ればそこそこ分かるけど、取材を通してこの本に書かれた内容は、ネットじゃ他の本じゃなかなか見つからないのだ。

あとね、本書の解説をWiredの編集長が書いてるんだけど、これも趣向が凝らしてあっていい。

ブロックチェーン・レボリューションが出来るまでの歴史や、この本の意義をなかなか熱々に語ってくれている。迷ったらまずこの解説を読むのも手かと思う。

そいで、これを読んだ後、今流行りのビットコイン関連の話や、日本寄りの話題をさらいたくなったら、
いまや日本のブロックチェーン論の大家になりつつある、野口悠紀雄先生の本なんかを読むといいと思う。




おしまい。

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