2016年2月23日火曜日

移動図書館 vol.9『学ぶ』が終了しました!

移動図書館管理人兼紙芝居師のどいけんです。
移動図書館 vol.9 『学ぶ』を先週末2/21(日)に開催しました。

出演者の皆様(が、大半でしたが…笑)、来てくれた皆様、学食を作ってくれた高橋さん(=gyuさん)、斎藤さん(=あゆみちゃん)、そして理事長(=難波ちゃん)ありがとうございました!!

今回初めてかなりコンセプトをかっちり決めたものにしたので、今までにない準備作業が色々ありましたが、結果、準備する過程も含めて楽しかったです!かっちりコンセプト決めるのいいね!!

「私立南平大付属常磐学園」という学園名を決めてやった、いわば移動図書館スピンオフ企画な感じになったのですが、「これはこれで別として、使い回しの効くフォーマットなんじゃない?」って思って割りと満足です。
(ちょっと頭の片隅で第二弾のアイディア考え始めました。そして次は集客…)


さて、振り返りを長々と書くのは苦手なので、あとは写真を載せていきます。


常磐学園の表札。まな板にマッキーで書くという試み。
projectOTOのハヤト君 筆

学食作ってウン十年。海軍上がりの学食担当(という設定)高橋さんの後ろ姿。
七つの海が透けて見えるぜ。。

配膳。大量のメンチカツを揚げた側から盛りつけて
いく配膳係の斎藤さん、お疲れ様でした。

担任である僕の学食はカレー南蛮。
学食でこのクオリティは出ないわ。。

歴史の授業をしてくれた鑑真先生方(バンド)です。
「鑑真は何度目かの渡航でメキシコ、ブラジルに行った」という
トンでもない裏歴史が飛び出しました!


我らが理事長です。後ろの光は文字通り後光です。
左手に居るのは地理の授業を担当してくれたkenohito先生(DJ)。

うえぞのかよ先生のマンガ、特大で載せておきます。
パーマ失敗したような眼鏡の兄ちゃん、そう、それは僕です。
かなり好きこれ。貰ってきたから次の移動図書館でも貼ろうかなと思ってます。


projectOTO先生方(VJ)。イケてるお兄さんお姉さん方に
この日イチバンの盛況をかっさらって行かれました。
ちなみにこの日イチバンの不評は僕でした(え?予想通りだって?まさか〜!?)


写真追加分とか、紙芝居の中身とかは後々アップデートして載せます!
それではそれでは、また次回!

2016年2月9日火曜日

書評【マンガ】:長崎訓子『Marble Ramble 名作文学漫画集』装丁と作品のチョイスに“粋”を感じる。

管理人兼紙芝居師のどいけんです。

これ、年末年始辺りで買った本の一つ。
本屋でたまたま発掘したと思って、したり顔で居たんですが、前にここで紹介したBRUTUSを読み返してたらばっちり載ってました。

こういう時、先越された感じがして、ちょっと口惜しいですね。

長崎訓子さんというイラストレーターの作品で、いま調べて知ったんですが、『チーズはどこへ消えた?』とか、『金持ち父さん、貧乏父さん』とか、ベストセラーの装画を幾つも手掛けてる方らしいです。

"Plutinum Studio"という、オシャレでセンス良さげなサイトを運営しておられました。Worksとか見てると、結構見てみたいのあるやん…。

選んでる時は全くそんな事は知らず、and ビニールで封されていたので中身も分からず、表紙と帯文を何度も見つめて結構悩みました…

が、結果買って正解!
見た目的にも、中身的にもクオリティ高かったです!!

■見た目
まず、巻頭カラー。これはamazonでも見れますが、『蝗の大旅行』という佐藤春夫原作の漫画がフルカラーで収められています。色合いがとても綺麗で、イラスト集を見ている感覚でページをめくれます。

次に装丁。これは買わないと分からんのですが、表紙カバーを剥がすと、本自体の表紙〜背表紙にもイラストが描かれてます。これがとてもイイ!
何というか、「羽織を脱ぐ時にチラッと見せる裏側に凝る」みたいな、江戸っ子の粋に繋がるものを感じる仕上がり。個人的にツボリました!!
世に数多ある「オシャレぶったクオリティ低い(手抜き含む)系」の本だったら嫌だなぁというのが一番の懸念だったんですが、それを払拭してくれるきちんとしたクオリティでございました。
紙の質感も良いしね。

■中身
何と言っても作品のチョイス。夏目漱石などの超メジャー作家も含まれていますが、いずれも選ばれているのは短編好きな玄人好みのテイスト。
幾つかは知っている話だったけど、正直知らない話の方が多かった。特に中国のやつとかは、作者も読めません状態。

なかでも特に気に入ったのは、向田邦子『鮒』と夏目漱石『変な音』。

『鮒』は特にこの短編集のベストだと思う。面白くて向田邦子の原作も古本屋で買って読んだけど、漫画の方が面白かった。

話としては、ある妻子ある男の家の玄関に突然、別れた愛人の家で飼っていた鮒が置かれて…という話(短編だから、あんま詳しく書きません!)。
漫画の中で回想場面があるんだけど、それが原作には無い and その回想が何とも言えない滋味があって最高です。

『変な音』は夏目漱石の病院ネタ。
夏目漱石は僕はちょっと変な読み方をしてて、小説はほとんど読んでないんだけど、『思ひ出すことなど』という漱石が大病をした前後のことが書かれた随筆が好きでそれは全部読みました。

で、大病した前後なんで病院ネタが多いんだけど、これまた何とも言えない味があって好きなんです。なんか、あーでもないこーでもないと大した出来事でないのに思い悩んでたりする感じとか。

この『変な音』もその類。同じ空気感なので凄い好き。


と、おすすめのこの漫画、amazonでもまだあんま安くなってないみたいだけど、悪い買い物にはならないと思うので是非どうぞ!

おしまい。







2016年2月7日日曜日

【書評】都築響一『天国は水割りの味がする〜東京スナック魅酒乱〜』は道徳の教科書レベル!!

どうも、移動図書館管理人兼紙芝居師のどいけんです。

発表した2015本ベストでノンフィクションベスト3に選んだうちのひとつ、都築響一『天国は水割りの味がする〜東京スナック魅酒乱〜』を紹介します。書く書く詐欺を一つ解消!


都築響一が都内のスナック巡りをして、マスター、ママからインタビューした内容をまとめたのが、この本。
ウェブマガジンの連載で毎週1件巡っていたものをまとめたものという事で、総勢50店舗、文字にして10000字超、ページ数にして850ページ超という分厚さで、「この本で撲殺された人は天国のスナックに行ける!」とまことしやかに囁かれているとかいないとか、んな筈ないけど思わず信じてしまいそうな、見た目も中身も超濃厚な1冊です。

とはいえなんてったって50店舗分だもんで、1店舗ごとのインタビューは20ページ程度。
なので読んでいくと「あ、もうこのママのインタビュー終わり?」という感覚になっちゃいます。

むしろもう僕とかはもっと沢山読みたい派だったんで「いっそ『上下巻1,200ページ』とかにしちゃって、もっと一人ひとりのインタビューのボリュームを増やしても良いんじゃないか!」と思う位にこの本大好きです。(採算取れなそうではあるけど・・・)

登場するママ・マスターの半生については、この都筑さん自身がまえがきに記載している言葉が正にその通り。とってもいいところなので以下に引用します。

「お客さんがまだこない夕方の時間を選んでお邪魔して、薄い水割りとか呑みながら、ママやマスターの一代記を聞く。どうってことない町の、どうってことない店で、どうってことない小さな商売してるだけなのに、誰もが見事にドラマティックな半生を持っている。話してくれながら涙を浮かべるひとがいて、こっちももらい泣きして、しんみりしたり笑ったりしながらインタビューと写真撮影。そして「もう、お仕事いいでしょ、呑んでいきなさいよ」と言われてまた深酒。楽しくて、同時に考えさせられる時間を、いろんな町のいろんな店で味わった。」(p19)

いや、ほんと読んでいくと各人みんなドラマティック。
バブル、自殺未遂、自己破産、結婚、離婚、再婚、事故、遺産問題、詐欺などなど波乱万丈ワードもあちらこちらに織り交ぜられてるし、経歴も元歌手、料理人、OLに始まり留学生までいるバラエティ。

ずーっと読んでいくと、
「ああ、人ってどう生きてもいいから、生き延びていけばいいのだなぁ…」と、道徳の時間の最初に学ぶような当たり前過ぎる事が、本の物量と多種多様さとでもって腹わたに落ちる感じがします。道徳の教科書に使ってほしいレベルです。


全体の話はこんなところで、あとは、もっと具体的にご紹介という事で、読んでく中で特に印象に残ったインタビューの紹介を幾つかします。


□新宿二丁目『銀』のママ
この本のトップを飾るママ。新宿に30年以上お店を出し、昼間は絵画教室の先生、夜はスナックのママという暮らしをずっと続けているのだそうで、エネルギーに溢れています。

一旦OLになるも向いてないと判断してすぐ辞めたというママは竹を割ったような気性が話し方にも表れていて、サバサバとした切符のいい話し方。そんな一方で、店を選ぶときは昼、夜、夜中と何度も歩いて人の流れを読むという緻密・頭の良さも兼ね備わっている。

戦後の復興期に女学生として遊びまわり、新宿への出店とバブル前後を含めたその趨勢、そして現在と振り返る半生はまさに戦後の風俗史をそのまま沿ったような話。
読み始めたのっけからこんなママの登場で、グッと引き込まれる。


□赤羽『マカロニ』のマスター
そう、赤羽です。最近『東京都北区赤羽』がドラマ(?)化されて原作もちょっと話題になりましたね。


このマスターもすごいエネルギー量の人。でも、頭がいいというよりはどんな困難があっても突き進むブルドーザーみたいな人。
ほんとにこの人に降りかかった困難というのがすごくて、最初は料理をやるつもりはなかったらしいのですが、炭鉱で働いていた時に事故に巻き込まれて怪我をし、料理の世界に進みます。
そこで力を付けてから赤羽に店を持ち、ずっと続けて今に至るのですが、その傍ら、結婚、離婚が二回あり、それがもう縁者が関わっていたり、自殺未遂があったり、訴訟があったりでもう、脚本にすると逆に胡散臭いレベルで色々起きてます。

それと店名『マカロニ』のゆるさのギャップがまたたまりません。。


□中野坂上『万里子』ママ
ママはドイツ人と日本人のハーフ。インタビュー時、まだ30歳との事でママの年齢としては正直めちゃくちゃ若いと思う。そして美人だし。

なんでもドイツの大学在学中、京都大学に留学生としてやってきて心理学を学んだのが日本で暮らしたいと思ったきっかけらしく、その後ドイツに帰ったものの「日本に暮らしたい」という思いを捨てきれずに日本に戻ってきたのだそう。

学生時代からやっていた芸能活動をする傍ら、そのときたまたまスナックでバイト始めて、芸能活動をやめて外資系企業で働き始めたにも関わらず、楽しくて止められず、スナックでのバイトを続けていたんだって。
それで最終的にはスナックのママをやりたくて自分の店を出したんだということ。
その行動力と、自分のやりたいことをやり切る姿勢には考えさせられるところすらある、インタビューなのです。


□五反野→銀座『あすか』ママ
このママは生き様がパンク過ぎです。

なんでも、地元でバンドをやっていたときにイケメンホストの旦那と出会ってすぐ同棲して結婚したと。
超ナイーブで典型的な「思い悩む色男」みたいな旦那の元で専業主婦やってたんだけど仕事を探して東京に。
そこから色々仕事を探して流れていくまま気づけばキャンピングカーで放浪生活。
そして旦那は自殺した、と。。。

旦那、インタビュー読んでると、阿部薫とか、山田かまちとか、尾崎豊とかなんかそんな感じみたい。70-80年代に流行ったあの辺の匂いがプンプンする。多分年代もちょっと被ってる。
旦那もそうだしママも然り。前に鈴木いづみの娘のインタビューで、鈴木いづみが自殺するのを隣の部屋で見ていて「『ああ、やっぱりな。いつかはこうなると思った』って思って見てた」とか、悟り切った調子で言ってたんだけど、ママの悟り方も同じような感じ。

そして一人残されたママ。新聞配達の男の子とのプラトニック・ラブからホスト通い、そこから店を出し、自伝『愛の復讐』自費出版、という流れ。

また、この『愛の復讐』、描写が官能小説さながらで凄い。ちょっと抜粋が載ってる。
でもって元々は足立区五反野に店を構えていたんだけど、とうとう銀座に出店したんだそうで。。すげぇよな、一回行ってみたい and 『愛の復讐』読んでみたい。



その他にも、自己破産して…みたいなちょっとリアルにヤバい系のマスターとか、モンゴルスナック?みたいなところとか、カラオケマニアのおじいちゃんのお店とか、面白いの満載です。

立ち読みでもいいから、最初のはしがきと、一個目の『銀』を是非読んでみて下さい!

おしまい。

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【関連するブログ】
この本、去年のノンフィクションベストスリーに入れてます。→ 2015読んだ本まとめandベスト
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2016年2月6日土曜日

書評:本谷有希子『異類婚姻譚』

さて、芥川賞自体のお話は別投稿でしたので、早速素直に本谷有希子『異類婚姻譚』の書評します。


内容はかなり読みやすい、話自体も短いし、オチを含めたストーリー展開も短編小説のそれ、という感じ。なので集中して読んだら多分1時間位で読めちゃう。

もう少し書くと、主人公の"サンちゃん"の目線で、普段の主婦としての生活をベースに話が進んでいく。登場人物も名前のある人は主人公とその旦那、弟、弟の彼女、近所のおばさん位で、そういう人たちとの間の(あくまで日常生活としての)事件が書かれつつ、オチまで向かう。


オチを読んで、まず真っ先に感じたのはタイトルの巧さ。『異類婚姻譚』ってまさしくだなーって思った。何というか、仏教説話とかでありそうなオチ。だから"譚"っていうのがすごいしっくり来る。現代の事を書いているんだけどね。

あと、本谷有希子の小説のタイトルは結構上手い、もしくは面白いと思うことが多い。『ぬるい毒』とか『腑抜けども、哀しみの愛を見せろ』とかね。

後々調べて知ったんだけど"異類婚姻譚"という名称自体は一般的なものみたい。
日本の説話であったり、他の国の神話であったりの中で、「人間と人間以外のものが結婚する」物語って確かにあるけど、それらの物語を総称して"異類婚姻譚"というんだって。
造語だと思ってたよ…


で、本谷有希子の『異類婚姻譚』の中で描かれる「異類」というのはそう、自分の旦那です。本谷有希子自身が結婚を通して感じたものが描かれている、と何かのインタビューで聞いた気がします。

自分の配偶者って確かに、「最も近い存在でありつつも永遠に理解出来ない存在」みたいな事よく言われるし、確かにそれは分かる。
まぁ、ずっと近くにいるわけなので「他人だなぁ、こいつ」って認識する機会がそもそも1番多いからそういう事が言われるんだろうなぁと自分では思っているけれど、異類と言われれば異類だよね。

(そして何故か、配偶者って自分と同じタイプじゃなくて異類な事が多いよね。ウチもそうだし周り見ててもそう。なんでだろ、遺伝子とか生物学的な裏付けがあんのかな?偉い人、教えて!!)

小説の中では旦那の異類感はかなりデフォルメされて書かれていて、それも何か説話とかでありそうだなって感じ。多分、芥川賞の選考理由としてはこのデフォルメの描写の説得力が大きかったんだと思う。結構、滑稽な感じで上手く描写されていて、視覚的にイメージ出来る。その当たりが(芥川賞的な意味で)順当だなと思う。


もう一つ、大きな特徴としては、今までの本谷有希子の小説とは柔らかさというか何というか、雰囲気が結構違うなと思った。これも結婚したりで人間が丸くなったというやつなのかな。
今までのやつはどこか刺々しい感じというか尖った感じというか、言い表しがたいけどそういう雰囲気をまとった小説が多かったし、「劇団の看板背負いながらヤンチャに小説書いてる人」的な印象だったんだけど、『異類婚姻譚』ではそういう尖った感じが全然ない。
それは一つは読みやすさに繋がっていて、色んな人に読みやすい小説になったんだど思う。片一方では、ヤンチャ感が無くなっていて個人的には少し寂しかったりもする。
(川上未映子も同じような変遷を感じた)

とはいえ万人に読まれる事は大切だし、今回のやつとかは正に夫婦で読んでお互いどう思ったかを話すのは割りと面白そうだし、そういうネタに出来るような間口の空いた仕上がりになっている。僕も嫁に読まそうとしてるし。

という具合の第154回芥川賞受賞作。
少なくとも『火花』の5倍は読みやすいと思うよ!『火花』は相当純文学的な文章だし。


なのでちょっと気になるand小一時間を割ける人、夫婦で小説をシェアしたい人は読むといいでしょう!


おしまい。

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・関連するブログ → 第154回芥川賞雑感
・関連してないけど読んで欲しいブログ(気合入れて書いて結構面白いと思うんだけど、PVが伸びなくて…) → 書評:『ケトル vol.27 松本清張が大好き!』+松本清張の短編幾つか
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第154回芥川賞の雑感『上田岳弘、芥川賞取らんのかいっ!!』

管理人兼紙芝居師のどいけんです。

元々は『異類婚姻譚』の書評の前トークとして雑感を書いてたんだけど、長くなったので別立てしました。書評は書いている途中なので土日中を目安にあげます。


さて、先日第154回芥川賞・直木賞が発表になりましたね。
<芥川賞に滝口さんと本谷さん、直木賞は青山さんに決定2016年1月19日20時29分>

前回の又吉、羽田圭介の受賞がかなり話題になったのと、二人とも今だにテレビとかメディアに出まくってるので「もう次の芥川賞かー」と感じてる人も多かったと思います。
ってか僕がそう思ってます。

そんな中、今回は本谷有希子と滝口悠生が芥川賞だそうで。

  
書評の前にこの二人が受賞したことについて、『5分でわかる芥川賞』紙芝居師としての所感です。
(一番はじめにやった紙芝居が、第146回芥川賞受賞者の2人(円城塔・田中慎弥)についての『5分でわかる芥川賞』でした。調べたらこれ、2011年下半期の芥川賞だって。時の流れ、恐ろしく早いな。。。)

まず真っ先に思ったのは「上田岳弘取らんのかいっ!!」ってこと。
まあ、全部の候補作読んでないし、個人的に最近の作家でイチオシなのが上田岳弘だからイチャモン付けてる感は否めないんですが…言いたいことが2つあります!!(コンサル風)

1個目、上田岳弘、マジ才能あるのになんで取らないの?

候補作ではないのだけど、去年、滝口悠生の『愛と人生』と上田岳弘の『私の恋人』を大体同じ頃に読んだ。
  
感想は『愛と人生』は正直つまんねぇなと思ったよ。テーマと書き方が合ってないというか、書き方が浅い印象だった。賞とか取って話題にはなってたから読んだんだけど、時代背景とか登場人物の人間関係とかを考えるともうちょっと深い内面描写とかドロッとした感じが欲しかったし、それが無くて何でこの小説書いたのか全然分かんなかった。
映画化はしやすそうだけどね。

一方、『私の恋人』の文体の新しさや発想のトび方は相当スゲェと思った。「新しい才能出てきたー!!」って思ってちょっとテンション上がった位。SFチックな構成と文体。確かにちょっと難解ではあるけど、エンタメじゃねぇんだし純文なんだからいいだろうが、と思ったし、この人にしか書けないし、思い付かない作品だなと思った。

だからね、正直、上田岳弘を候補者に入れつつも受賞させないってどういうことやねんと、思うわけですよ。2回言うけど、候補作全部読んでないからイチャモンですが、才能はピカイチだろと。

実際の選評はこんな感じだったようで。
まあ、と言いつつも実際のところで滝口悠生が取るのはまだわかる。上田岳弘とダブルでとかだったら、至極順当、と恐らく思った。
個人的な感想は置くと、やっぱ、新進気鋭の作家の中では頭一つ抜けて話題や他の賞の受賞も多いし、候補者を見る限り下馬評的には"本命◎"だよね。
(だいぶ好き勝手に書いたので、読もうと思って『死んでいない者』もポチリました。Amazonで買うとなんかポイントかなり付くし。)

そんな中、もう1個言いたい事。

2個目、本谷有希子は芥川賞なの?
最初に言うと、本谷有希子は好きです。今までに幾つか小説・戯曲読んでるし、面白いと思う。
たださ、芥川賞の規定をみると
芥川龍之介の名を記念して、直木賞と同時に昭和10年に制定された。各新聞・雑誌(同人雑誌を含む)に発表された純文学短編作品中最も優秀なるものに呈する賞(応募方式ではない)。主に無名もしくは新進作家が対象となる。
とあるんだよね。(文藝春秋のサイトより)

で、本谷有希子って新進作家なんだっけ?
Wikiとかを見ても分かる通り、本谷有希子の(小説家としての)デビューって『江理子と絶対』で2003年。
そっから『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』が2005年、『生きてるだけで、愛。』が2006年、『ぬるい毒』2011年と代表作だけ見ても10年以上コンスタントに出してる。



だし、劇団とかは2000年からやってて戯曲とかもずっと書いてるわけで、実際かなりベテラン。こんな15年選手を掴まえて新進作家、とは…ちょっと遅すぎやしませんかね?
(ちなみに羽田圭介もデビューは2003年、ただコンスタントに本出してるのはここ5年位)

ここからは想像なんだけど、まさか本人もこのタイミングで芥川賞もらうとは思ってなかったんじゃないかな?ってか、「今更芥川賞かよ!直木賞じゃねぇのかよ!」って思ってもおかしくないと思う。(作品としては直木賞っぽくない作品だから、そういう作品だったとして)
こんだけ今まで活動してんのに「新進作家さん、これから頑張ってねー」みたいに言われたようで、逆にブチ切れるんじゃないかとか思ってしまいます。

本谷有希子の作家としての資質に一切文句はないんだけど、「今回受賞させるならさ、『腑抜けども…』の時点であげれば良かったじゃん、他のやつだって遜色なくない?」ってのが正直な感想。

選考委員も村上龍とかさ、デビュー作でバチッと芥川賞取ってセンセーション巻き起こしてたのに、なんでそういう人を拾いあげないんだろう?ちょっと次世代の才能発掘しようという気負いが無くない?とも思ったり。。

とまぁ今回の芥川賞には思うところありありでした。

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【関連するブログ】
『異類婚姻譚』の書評はこちら! → 書評:本谷有希子『異類婚姻譚』
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