2017年3月6日月曜日

【書評】フリート横田『東京ノスタルジック百景』: 昭和は遠くなりにけり、を実感する本。



2020年の東京五輪に向けて、日々準備が進んでいく現在の東京。再開発も甚だしい。

変わっていくのは町の常だし、変わり続けていくのが当然の姿だとは思うものの、どこか古い風景に良さを求めてしまうのも人情。

平成ももう29年、天皇の生前退位も昨今取り沙汰されていて平成すらもいつまで続くのかという現在、再開発に圧されて消えていく「昭和」という時代への郷愁をまとめたのが本書『東京ノスタルジック百景』だ。

本書は昨年(2016年)12月に刊行されたもので、今、東京にあって、「昭和」という時代が感じられる風景、建造物を色々と紹介している。

それらの風景、建造物について、
・取り壊しや廃業が決まっているもの=赤
・取り壊し・廃業になるかも知れないもの=黄
・何とか存続しそうなもの=青
と色付けているのも特徴だ。

実際、取材時には営業してたけどもう廃業してしまい、これから訪ねようとしてももう、手遅れなところもある。

僕はこういう本やWEBサイトが好物で結構読んでるんで、類似本、類似サイトで箸にも棒にもかからないような奴らも見てきたんだけれども、
この本はそういう中味の薄い類似本ではなくて、面白かった。

著者のフリート横田さんは、ライター兼編集者の方らしく、今まで存じ上げなかったんだけど、一言でいうとかなり熱量のある方だなと思う。
インタビューや写真などがサラリと載せてあるけれども、結構エネルギーを割かないと出てこないだろうなというものが多い。

例えばインタビューだと、ニュー新橋ビルの文章。新橋で古くからお店をやってる人に昔の新橋の様子をインタビューしてるが、青線があった当時の客と女のやり取りだとか、眼に浮かぶような話を聞き出している。
他には行商のおばあちゃんにインタビュー、写真撮影の許可を貰っていたりもして、この辺りは著者の対象への熱量の賜物だろう。

あと写真もかなり資料集めたんだろうなと思っていて、昭和40年代頃の写真が特に個人的にアツかった。
ニュー新橋ビルが立つ前の新橋駅の風景とか、黒川紀章が中銀カプセルタワービルを建てた時の写真とか、晴海の貨物線が現役で使われてる写真とか。
ってか昭和40年って、1965年だからね、もはや半世紀以上前なんだよね、信じられん。。。

ちなみに自分の本書でのイチ推しは、ニュー新橋ビル、晴海倉庫群、TSミュージックです。

この辺りはcakesでもちょっと読めるので、興味ある人は見てみると良いでしょう。



おしまい。

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