2016年4月11日月曜日

書評:平成まで大衆芸能史をアップデートした記念碑的テレビ本『1989年のテレビっ子』

大変お久しぶりです、、、どいけんです。

イベントが終わりばたばたとしている間に3月が過ぎ、あっという間に桜も散り際。
時の流れは早いもんですねぇ(水野晴郎風)、ほんとに。
ブログの更新もすっかりサボってすみません。。

さて、今日紹介するのは『1989年のテレビっ子』(戸部田誠)です。
発売前からcakesで特集されていて、心待ちにしていた本なのですが、読んだら期待通りというか期待以上に最高でした!





この本は昭和が終わり平成が始まった1989年。その年をテレビバラエティのターニングポイントとなる年として、
そこに至るまでの"昭和テレビバラエティ史”と、"平成テレビバラエティ史”の始まりを描く内容になってる。
凄いのは、昭和から平成までを通史的に書いた本って、大衆芸能史の本と捉えると多分初めてで、だからこの本ってホント記念碑的だと思う!!

笑いに関する大衆芸能って、江戸時代の烏亭焉馬から始まる「寄席」を場とした落語と、
明治時代の川上音次郎のから始まった「劇場」を場とした喜劇が戦後すぐまで二大メジャーで、
昭和30年代頃から「テレビ」がその二大メジャーを駆逐したという流れになっている。

実際、コント55号の欽ちゃんや坂上二郎、ビートたけしなんかは劇団出身だし、明石家さんまも元は落語家で、元々中心だった「寄席」「劇場」という場から「テレビ」という場へと移ってコメディアンとして大物になった人たちが、漫才ブームの頃まではそこそこにいる。

だから昭和から平成にかけてのテレビバラエティ史をアップデートすることはそのまま、大衆芸能史をアップデートすることを意味する。
それ初めてだな、マジで凄いなと思ったから本が出る前からワクワクしてた。

どうターニングポイントだったか、をものすごく簡単に言うと、1989年に起きたことは、
・『夢で逢えたら』(ダウンタウン、ウッチャンナンチャン)全国放送開始
・『今夜は最高!』(タモリ)が裏番組の『ねるとん紅鯨団』(とんねるず)に視聴率で負け、終了
・『オレたちひょうきん族』(たけし、さんま)の終了
で、昭和のビッグネームや代名詞的な番組の終了と、平成のビッグネームの本格的な活躍の開始だ。

昭和のテレビバラエティは「コント55号、ザ・ドリフターズ → 漫才ブーム → BIG3 (タモリ、たけし、さんま)」、
平成のテレビバラエティは「とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、ナインティナイン」というのが、
ものすごい大まかな構図で、コント55号から始まる昭和のテレビバラエティ史から始まり、1989年を迎え、平成のテレビバラエティになっていくという流れが、本書では書かれている。

更に、2014年3月31日、この日を(著者の感傷も交え)”平成テレビバラエティの終わり”と言っている。
この日の夜は32年続いた「笑っていいとも」のグランドフィナーレで、タモリ、さんま、とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、ナインティナインが一同に介した。(たけしは昼間に出演)

ネット上で『テレビのお葬式みたい』と流れたりもした通り、その場は昭和から生き残り続けてテレビを引っ張ってきたBIG3と、
平成のテレビを彩ってきたビッグネームが集まり、壮観すぎてもうなんか国葬でもやってるような雰囲気だった。その事を本書でも書いている。

僕も同意見。グランドフィナーレを見たとき、"終わる”感が半端なかった。
ネットも出てきて、国民みんなテレビを見るわけでは無くなった。メディアの劣化も叫ばれて久しい。
そういう状態で、こんな「国民的スター」みたいな人をテレビが生み出すことはないんだろうなーって思った。
まあ、テレビが生み出さないということは、ネットとか、新しい何かでそういう人が出てくる筈だから、それはそれで楽しみなんだけど。


と、最後締まりがないですが、思わず感傷的になるほど、僕らに卑近なテレビバラエティ史が全て書かれた、素晴らしい本なのです。
現代史か現社の授業あたりで、読ませたい、これ。


おしまい。 

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