2016年7月6日水曜日

書評『人工知能は人間を超えるか』松尾豊:"電気羊の夢"の前に、人工知能の夢と現実を。

最近、FinTechとかIoTと同様、Deep Learning(以下「ディープラーニング」)ってよく聞くようになったなぁと思ってた。
それとは別口で、よく本屋に平積みで人工知能関連の本があるなぁとも思ってた。
それとはまた別の文脈で、機械学習ってなんじゃらというのも気になってた。

で、機械学習の事を調べていくとどうやらその辺り、同じ界隈の話をしているらしい。
(無知なんで、ディープラーニングとか機械学習とか人工知能とかって繋がってなかったんですよ…恥)

そうかそうかと合点で、「なんかその辺の入門に丁度いいやつないかしらね、おお、あの平積みになってたやつ、分かりそうな感じやんけ」と思って手にしたのが本書。
Kindle版が割引で安かったので、Kindle版をGetしました。
(875円になってて更に175ポイント還元されるので実質700円、紙の本の約半額という。。。いつまで安いかは不明。画像からAmazonに飛べます。)



人工知能を知らない人にも分かるよう、その歴史、現在の状況、そして展望を第一線の研究者である松尾豊さんがまとめたのが本書。
ちなみに女の子の絵はポップさ醸し出してるけど中身は真面目。女の子関係ない。

内容のベースとなったのが、経済産業省の西山審議官(当時)から「素人にも分かるように人工知能の説明をしてほしい」と言われて作成したプレゼンテーションなので、専門的な事を全然知らん僕にもとても分かりやすかった。

構成は大きく3つ、
・人口知能について、今どういう研究がされているか、それを踏まえて本書をどう読んだら良いかのイントロダクション
・人工知能の黎明期(第一次ブーム)から、第二次ブーム、そして第三次ブームとしての現在までの歴史と人工知能の説明
・今後の展望と、僕らの暮らしはどうなるのか、そして、人工知能は人間を超えるのか、の著者の意見とまとめ
に分かれている。構成も明快なんです。

で、ここではその中からピックアップして、人工知能自体の説明、人工知能の発展、についてそれぞれ印象に残ったことを紹介します。


1. 人工知能自体の説明

人口知能が出来ることのレベルを「アルバイト・一般社員・課長・マネージャー」という比喩で表現していてそれが超分かりやすい。
ちょうど各レベルが各ブームの人口知能で出来るようになったことに該当していて、歴史的な進歩も感覚的に概観がわかるのでそれぞれ紹介します。

【アルバイト】厳格なルールを管理者が決めて、その通りに単純作業する。荷物の縦横高さだけで大中小を判断して動くバイト君、のニュアンス。
該当するのは、家電等にみられる半ばマーケティング的な狙いも込めて「人工知能」と謳っているもの。学術的には人工知能というより単なる制御プログラム。

【一般社員】同じく縦横高さ重さ等で仕分けるように支持されているが、荷物の種類に応じて沢山の知識がインプットされており、その通りに作業できる。(例:天地無用は上下逆にしない、割れ物注意は丁寧に扱う)
これが第一次ブーム(知識量次第で第二次ブーム)で研究された探索・推論などに該当。

【課長】幾つかのサンプルと正解(「この大きさは大だよ」、とか)が与えられてそこからルールを学んだら次からは自分で「これは大」「これは中」とか判断する。
第三次ブームの嚆矢となった機械学習がこれに該当。

【マネージャー】幾つかのサンプルから特徴を見出して自分でルールを規定し、判断。「これは大だけど細長いから別に分けよう」とか自分で決める。
現在騒がれているディープラーニングはこれに該当。

どうです?すげぇ分かりやすくない?この説明ほんとに分かりやすいなと思ってちょっと感動したよ。
まあ、素人にも分かるようにものすごく簡略化した説明だとは思いますが、スッと入ってきた。
これが第一章にあってその後に二章以降で歴史を追っての説明になるという構成も読みやすい。

そして、「ってかマネージャーまで出来るようになってるんだ、やべぇな、どうするよ人間。」って思った。のが2つ目に繋がります。


2. 人工知能の発展

書名にもなっている「人工知能は人間を超えるか」という問いについては、松尾さん自体は「現時点ではNO」という立場なんですが、
ただ「超えはしないけど代替できるものは沢山ある」というのが明確に書かれています。で、僕にとってはこの内容はかなり衝撃的でした。

「あと10〜20年でなくなる職業・残る職業」というのが紹介されていて、1.で述べた通り、
最新の研究ではもはやルール作りまで自分で出来るようになってきている人工知能の現状を踏まえると、リアリティが半端じゃない。
だってマネージャーまで出来るんだもんね、そりゃ仕事代替できるよね、という感想。

ただ、当然代替できるものとそうでないものがあって、人とコミュニケーションを取るサービス業、サンプル数が少なくてその場その場で特有の判断(経営判断とか)を下す必要があり経験が必要な職業などは代替が難しいようです。まぁ、そういう仕事って人間だって誰でも出来るわけじゃないよね。。。

なので個人的には、
蓋然性が高いか低いか分からない、「人工知能が人間を超えて進歩して、果てはユートピアかディストピアか」みたいな話よりも、
蓋然性が高い「仕事取って代わられちゃう」って話の方が切実だし怖ぇーな、って思いました。


類書で同じ出版社で『人工知能は私たちを滅ぼすのか』というのが出ています。



2冊セットのような装丁・趣きなので、「人工知能は人間を超えるか」というという問いに対して「Yes」って答えてるのかもしれないですね、こちらは。未読なので予想ですが。


というわけで、
「人工知能界隈知りたいが何から読んだらいいのかわからん!」とか、「ディープラーニングってバズワードは何さ!?」とか、「SF大好き!!」というような方にはオススメの本です。



おしまい。 

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