2016年2月6日土曜日

第154回芥川賞の雑感『上田岳弘、芥川賞取らんのかいっ!!』

管理人兼紙芝居師のどいけんです。

元々は『異類婚姻譚』の書評の前トークとして雑感を書いてたんだけど、長くなったので別立てしました。書評は書いている途中なので土日中を目安にあげます。


さて、先日第154回芥川賞・直木賞が発表になりましたね。
<芥川賞に滝口さんと本谷さん、直木賞は青山さんに決定2016年1月19日20時29分>

前回の又吉、羽田圭介の受賞がかなり話題になったのと、二人とも今だにテレビとかメディアに出まくってるので「もう次の芥川賞かー」と感じてる人も多かったと思います。
ってか僕がそう思ってます。

そんな中、今回は本谷有希子と滝口悠生が芥川賞だそうで。

  
書評の前にこの二人が受賞したことについて、『5分でわかる芥川賞』紙芝居師としての所感です。
(一番はじめにやった紙芝居が、第146回芥川賞受賞者の2人(円城塔・田中慎弥)についての『5分でわかる芥川賞』でした。調べたらこれ、2011年下半期の芥川賞だって。時の流れ、恐ろしく早いな。。。)

まず真っ先に思ったのは「上田岳弘取らんのかいっ!!」ってこと。
まあ、全部の候補作読んでないし、個人的に最近の作家でイチオシなのが上田岳弘だからイチャモン付けてる感は否めないんですが…言いたいことが2つあります!!(コンサル風)

1個目、上田岳弘、マジ才能あるのになんで取らないの?

候補作ではないのだけど、去年、滝口悠生の『愛と人生』と上田岳弘の『私の恋人』を大体同じ頃に読んだ。
  
感想は『愛と人生』は正直つまんねぇなと思ったよ。テーマと書き方が合ってないというか、書き方が浅い印象だった。賞とか取って話題にはなってたから読んだんだけど、時代背景とか登場人物の人間関係とかを考えるともうちょっと深い内面描写とかドロッとした感じが欲しかったし、それが無くて何でこの小説書いたのか全然分かんなかった。
映画化はしやすそうだけどね。

一方、『私の恋人』の文体の新しさや発想のトび方は相当スゲェと思った。「新しい才能出てきたー!!」って思ってちょっとテンション上がった位。SFチックな構成と文体。確かにちょっと難解ではあるけど、エンタメじゃねぇんだし純文なんだからいいだろうが、と思ったし、この人にしか書けないし、思い付かない作品だなと思った。

だからね、正直、上田岳弘を候補者に入れつつも受賞させないってどういうことやねんと、思うわけですよ。2回言うけど、候補作全部読んでないからイチャモンですが、才能はピカイチだろと。

実際の選評はこんな感じだったようで。
まあ、と言いつつも実際のところで滝口悠生が取るのはまだわかる。上田岳弘とダブルでとかだったら、至極順当、と恐らく思った。
個人的な感想は置くと、やっぱ、新進気鋭の作家の中では頭一つ抜けて話題や他の賞の受賞も多いし、候補者を見る限り下馬評的には"本命◎"だよね。
(だいぶ好き勝手に書いたので、読もうと思って『死んでいない者』もポチリました。Amazonで買うとなんかポイントかなり付くし。)

そんな中、もう1個言いたい事。

2個目、本谷有希子は芥川賞なの?
最初に言うと、本谷有希子は好きです。今までに幾つか小説・戯曲読んでるし、面白いと思う。
たださ、芥川賞の規定をみると
芥川龍之介の名を記念して、直木賞と同時に昭和10年に制定された。各新聞・雑誌(同人雑誌を含む)に発表された純文学短編作品中最も優秀なるものに呈する賞(応募方式ではない)。主に無名もしくは新進作家が対象となる。
とあるんだよね。(文藝春秋のサイトより)

で、本谷有希子って新進作家なんだっけ?
Wikiとかを見ても分かる通り、本谷有希子の(小説家としての)デビューって『江理子と絶対』で2003年。
そっから『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』が2005年、『生きてるだけで、愛。』が2006年、『ぬるい毒』2011年と代表作だけ見ても10年以上コンスタントに出してる。



だし、劇団とかは2000年からやってて戯曲とかもずっと書いてるわけで、実際かなりベテラン。こんな15年選手を掴まえて新進作家、とは…ちょっと遅すぎやしませんかね?
(ちなみに羽田圭介もデビューは2003年、ただコンスタントに本出してるのはここ5年位)

ここからは想像なんだけど、まさか本人もこのタイミングで芥川賞もらうとは思ってなかったんじゃないかな?ってか、「今更芥川賞かよ!直木賞じゃねぇのかよ!」って思ってもおかしくないと思う。(作品としては直木賞っぽくない作品だから、そういう作品だったとして)
こんだけ今まで活動してんのに「新進作家さん、これから頑張ってねー」みたいに言われたようで、逆にブチ切れるんじゃないかとか思ってしまいます。

本谷有希子の作家としての資質に一切文句はないんだけど、「今回受賞させるならさ、『腑抜けども…』の時点であげれば良かったじゃん、他のやつだって遜色なくない?」ってのが正直な感想。

選考委員も村上龍とかさ、デビュー作でバチッと芥川賞取ってセンセーション巻き起こしてたのに、なんでそういう人を拾いあげないんだろう?ちょっと次世代の才能発掘しようという気負いが無くない?とも思ったり。。

とまぁ今回の芥川賞には思うところありありでした。

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【関連するブログ】
『異類婚姻譚』の書評はこちら! → 書評:本谷有希子『異類婚姻譚』
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