2016年2月9日火曜日

書評【マンガ】:長崎訓子『Marble Ramble 名作文学漫画集』装丁と作品のチョイスに“粋”を感じる。

管理人兼紙芝居師のどいけんです。

これ、年末年始辺りで買った本の一つ。
本屋でたまたま発掘したと思って、したり顔で居たんですが、前にここで紹介したBRUTUSを読み返してたらばっちり載ってました。

こういう時、先越された感じがして、ちょっと口惜しいですね。

長崎訓子さんというイラストレーターの作品で、いま調べて知ったんですが、『チーズはどこへ消えた?』とか、『金持ち父さん、貧乏父さん』とか、ベストセラーの装画を幾つも手掛けてる方らしいです。

"Plutinum Studio"という、オシャレでセンス良さげなサイトを運営しておられました。Worksとか見てると、結構見てみたいのあるやん…。

選んでる時は全くそんな事は知らず、and ビニールで封されていたので中身も分からず、表紙と帯文を何度も見つめて結構悩みました…

が、結果買って正解!
見た目的にも、中身的にもクオリティ高かったです!!

■見た目
まず、巻頭カラー。これはamazonでも見れますが、『蝗の大旅行』という佐藤春夫原作の漫画がフルカラーで収められています。色合いがとても綺麗で、イラスト集を見ている感覚でページをめくれます。

次に装丁。これは買わないと分からんのですが、表紙カバーを剥がすと、本自体の表紙〜背表紙にもイラストが描かれてます。これがとてもイイ!
何というか、「羽織を脱ぐ時にチラッと見せる裏側に凝る」みたいな、江戸っ子の粋に繋がるものを感じる仕上がり。個人的にツボリました!!
世に数多ある「オシャレぶったクオリティ低い(手抜き含む)系」の本だったら嫌だなぁというのが一番の懸念だったんですが、それを払拭してくれるきちんとしたクオリティでございました。
紙の質感も良いしね。

■中身
何と言っても作品のチョイス。夏目漱石などの超メジャー作家も含まれていますが、いずれも選ばれているのは短編好きな玄人好みのテイスト。
幾つかは知っている話だったけど、正直知らない話の方が多かった。特に中国のやつとかは、作者も読めません状態。

なかでも特に気に入ったのは、向田邦子『鮒』と夏目漱石『変な音』。

『鮒』は特にこの短編集のベストだと思う。面白くて向田邦子の原作も古本屋で買って読んだけど、漫画の方が面白かった。

話としては、ある妻子ある男の家の玄関に突然、別れた愛人の家で飼っていた鮒が置かれて…という話(短編だから、あんま詳しく書きません!)。
漫画の中で回想場面があるんだけど、それが原作には無い and その回想が何とも言えない滋味があって最高です。

『変な音』は夏目漱石の病院ネタ。
夏目漱石は僕はちょっと変な読み方をしてて、小説はほとんど読んでないんだけど、『思ひ出すことなど』という漱石が大病をした前後のことが書かれた随筆が好きでそれは全部読みました。

で、大病した前後なんで病院ネタが多いんだけど、これまた何とも言えない味があって好きなんです。なんか、あーでもないこーでもないと大した出来事でないのに思い悩んでたりする感じとか。

この『変な音』もその類。同じ空気感なので凄い好き。


と、おすすめのこの漫画、amazonでもまだあんま安くなってないみたいだけど、悪い買い物にはならないと思うので是非どうぞ!

おしまい。







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